中小企業や小規模事業者を対象とした支援を行う「IT導入補助金」の募集が行われています。今回は、IT導入補助金の概要、補助金額などを詳しく解説します。
申請を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
IT導入補助金とは?事業概要や目的
IT導入補助金は、ITツール等を導入する経費の一部を補助することで、中小企業や小規模事業者等の業務効率化・売上アップを促す制度です。2017年にスタートしました。
いくつかの類型に分けて募集を行っていますが、どれも中小企業・小規模事業者を対象としています。
類型によって目的が異なるため、ここからはIT導入補助金の3つの枠について解説します。
IT導入補助金の「3つの枠」
IT導入補助金には、「通常枠」「セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入枠」の3つの枠が用意されています。
・通常枠(A・B類型)
中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助する
・セキュリティ対策推進枠
中小企業・小規模事業者等がサイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避するために、サイバーセキュリティサービスの利用料を補助する
・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
中小企業・小規模事業者等が導入する会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助する
それぞれ目的や対象者が異なるので、1つずつ解説します。
通常枠とは?
通常枠は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助するために用意されたものです。
自社の経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、中小企業・小規模事業者等に、業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図ってもらうことを目的としています。
通常枠の中でも、さらにAとBの2つの類型に分けられており、補助金額や業務工程のプロセス数が異なります。
セキュリティ対策推進枠とは?
セキュリティ対策推進枠は、中小企業・小規模事業者等に対して、サイバーセキュリティサービスの利用料を補助するものです。
中小企業・小規模事業者等が、サイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避すること、サイバー攻撃被害によって供給制約や価格高騰を潜在的に引き起こすリスクや、生産性向上を阻害するリスクを低減することを目的としています。
デジタル化基盤導入枠とは?
デジタル化基盤導入枠は、中小企業・小規模事業者等が導入する会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの経費の一部を補助するものです。
令和5年10月からスタートするインボイス制度への対応も見据え、企業間取引のデジタル化を推進することを目的としています。
デジタル化基盤導入枠の中でも、さらに「デジタル化基盤導入類型」「複数社連携IT導入類型」「商流一括インボイス対応類型」の3つに分けられています。
IT導入補助金は何をいくら補助してくれるの【補助金額】
IT導入補助金では、どのようなものに対し、いくらの補助額が出されるのでしょうか。
経費として認められるのは、以下のようなものです。
- ソフトウェア購入費
- クラウド利用料
- 導入関連費
- サービス利用料
- ハードウェア購入費
ただし、補助対象となるITツールは、IT導入補助金事務局によって認定されたものに限られていますので、注意しましょう。
ここからは、各枠ごとの補助金額について、それぞれ解説します。
通常枠
通常枠における補助金額は、以下の表の通りです。
種類 |
A類型 |
B類型 |
---|---|---|
補助額 |
5万〜150万円未満 |
150万〜450万円以下 |
補助率 |
1/2以内 |
|
プロセス数※1 |
1以上 |
4以上 |
ITツール要件(目的) |
類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、労働生産性の向上に資するITツールであること。 |
|
賃上げ目標 |
加点 |
必須 |
補助対象 |
ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 |
※ 1:「プロセス」とは、業務工程や業務種別のこと
A類型、B類型それぞれで条件が異なるので、注意して確認しましょう。
セキュリティ対策推進枠
セキュリティ対策推進枠における補助金額は、以下の表の通りです。
種類 |
セキュリティ対策推進枠 |
---|---|
補助額 |
5万円〜100万円 |
補助率 |
1/2以内 |
機能要件 |
独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービス |
補助対象 |
サービス利用料(最大2年分) |
デジタル化基盤導入枠
デジタル化基盤導入枠における補助金額は、以下の表の通りです。
種類 |
デジタル化基盤導入枠 |
|
---|---|---|
補助額 |
ITツール |
|
(下限なし)〜350万円 |
||
内、〜50万円以下部分 |
内、50万円超〜350万円部分 |
|
機能要件※1 |
会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 |
会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 |
補助率 |
3/4以内 |
2/3以内 |
対象ソフトウェア |
会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト |
|
賃上げ目標 |
なし |
|
補助対象 |
ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 |
※1:該当する機能の詳細はITツール登録要領を参照
上記に加え
ハードウェア購入費 |
PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機:補助率1/2以内、補助上限額10万円 |
---|---|
レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円 |
商流一括インボイス対応類型
商流一括インボイス対応類型における補助金額は、以下の表の通りです。
種類 |
商流一括インボイス対応類型 |
---|---|
補助額 |
ITツール |
(下限なし)〜350万円 |
|
機能要件 |
インボイス制度に対応をした受発注の機能を有しているものであり、かつ取引関係における発注側の事業者としてITツールを導入する者が、当該取引関係における受注側の事業者に対してアカウントを無償で発行し、利用させることのできる機能を有するもの |
補助率 |
中小企業・小規模事業者等:2/3以内 その他の事業者等:1/2以内 |
対象ソフトウェア |
インボイス制度に対応をした受発注の機能を有している、クラウド型ソフトウェア |
賃上げ目標 |
なし |
補助対象 |
クラウド利用料(最大2年分)※1 |
※1:契約する受注側のアカウント総数のうち、取引先である中小企業・小規模事業者等に供与するアカウント数の割合を乗じた額が補助対象経費とする。
複数社連携IT導入類型
複数社連携IT導入類型における補助金額は、以下の表の通りです。
種類 |
複数社連携IT導入類型 |
|||
---|---|---|---|---|
補助額 |
デジタル化基盤導入類型の要件に属する経費 |
デジタル化基盤導入類型の要件に属さない複数社類型特有の経費 |
||
(1)基盤導入経費 |
(2)消費動向等分析経費 |
(3)代表事業者が参画事業者をとりまとめるために要する事務費、外部専門家謝金・旅費 |
||
(下限なし)~350万円 |
50万円×グループ構成員数 |
((1)+(2))×10%に補助率2/3を乗じた額もしくは200万円のいずれか低い方 |
||
内、~50万円以下部分 |
内、50万円超~350万円部分 |
|||
機能要件 ※1 |
会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 |
会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 |
- | |
補助率 |
3/4以内 |
2/3以内 |
2/3以内 |
2/3以内 |
補助上限額 |
3,000万円 |
200万円 |
||
対象ソフトウェア |
会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト |
各種システム※2 |
- | |
賃上げ目標 |
なし |
|||
補助対象 |
ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 |
ソフトウェア購入費・クラウド利用料(1年分)・導入関連費 |
||
ハードウェア購入費用 |
PC・タブレット等※3 :補助率1/2以内、補助上限額10万円 |
AIカメラ・ビーコン・デジタルサイネージ等 |
||
レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円 |
※1:該当する機能の詳細はITツール登録要領を参照
※2:対象例(消費動向分析システム、経営分析システム、需要予測システム、電子地域通貨システム、キャッシュレスシステム、生体認証決済システム等)
※3:PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機
現在募集中の「IT導入補助金2023」のスケジュール
現在募集を行っているIT導入補助金2023のスケジュールは以下の通りです。
なお、8月以降の情報に関しては、今後順次発表となるので公式サイトを確認しましょう。
IT導入支援事業者の登録申請 |
登録申請 |
2023年3月20日(月)受付開始~2023年7月10日(月)17:00 |
---|---|---|
採択決定 |
通知をもってお知らせいたします。 |
|
ITツール(ソフトウエア、サービス等)の登録申請 |
募集期間 |
2023年3月20日(月)受付開始~2023年7月18日(火)17:00 |
交付申請期間 |
募集期間 |
2023年3月28日(火)受付開始~2023年7月31日(月)17:00 ※デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)は2023年6月20日(火)より申請開始予定 |
※デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)は2023年6月20日(火)より申請開始予定
IT導入補助金の対象事業者
IT導入補助金の対象事業者は、以下の表の通りです。
中小企業(飲食、宿泊、卸・小売、運輸、医療、介護、保育等のサービス業の他、製造業や建設業等も対象)
業種・組織形態 |
資本金(資本の額又は出資の総額) |
従業員(常勤) |
|
---|---|---|---|
資本金・従業員規模の一方が、右記以下の場合対象(個人事業を含む) |
製造業、建設業、運輸業 |
3億円 |
300人 |
卸売業 |
1億円 |
100人 |
|
サービス業(ソフトウエア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) |
5,000万円 |
100人 |
|
小売業 |
5,000万円 |
50人 |
|
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) |
3億円 |
900人 |
|
ソフトウエア業又は情報処理サービス業 |
3億円 |
300人 |
|
旅館業 |
5,000万円 |
200人 |
|
その他の業種(上記以外) |
3億円 |
300人 |
|
その他の法人 |
医療法人、社会福祉法人、学校法人 |
- |
300人 |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 |
- |
100人 |
|
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 |
- |
主たる業種に記載の 従業員規模 |
|
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 |
- |
主たる業種に記載の 従業員規模 |
|
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) |
- |
主たる業種に記載の 従業員規模 |
|
特定非営利活動法人 |
- |
主たる業種に記載の 従業員規模 |
小規模事業者
業務分類 |
従業員 |
---|---|
常勤 |
|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) |
5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 |
20人以下 |
製造業その他 |
20人以下 |
IT導入補助金を利用する流れ・手順
ここからは、IT導入補助金を利用するにあたって、行うべき手順や流れについて解説します。
これから申請を行う方は参考にしてください。
事前準備
IT導入補助金を導入するための事前準備として、以下の3つを行いましょう。
- gBizIDプライムアカウントの取得
- SECURITY ACTIONの宣言
- 「みらデジ」ポータルサイト内において「経営チェック」の実施
必要書類の準備
IT導入補助金の申請には、提出すべき書類が数多くあります。申請のための書類を集め、期限に余裕を持って準備しましょう。
ITツールの選択
IT導入補助金の申請にあたって、実際に使用したいITツールを選ぶ必要があります。自社の業種や事業規模、経営課題等に合ったITツールを、申請する前に選定しましょう。
交付申請
事前の準備が完了したら、以下の流れに沿って交付申請を行いましょう。
- IT導入支援事業者から『申請マイページ』の招待を受け、代表者氏名等の申請者基本情報を入力する。
- 交付申請に必要となる情報入力・書類添付を行う。
- IT導入支援事業者にて、導入するITツール情報、事業計画値を入力する。
- 『申請マイページ』上で入力内容の最終確認後、申請に対する宣誓を行い事務局へ提出する。
ITツール納入・事業開始
交付申請が完了したら、補助金事務局から交付決定が行われます。交付決定の後に、ITツールの発注・契約・支払いを行い、事業を実施します。
なお、交付決定の連絡が届くより前にITツールの発注・契約・支払いを行ってしまうと、補助金交付が受けられなくなるので、注意しましょう。
実績報告(金額の確定)
事業の実施が完了したら、事業実績報告を行います。その後事務局で補助金額が確定されると、『申請マイページ』から補助金額が確認できます。
補助金交付
『申請マイページ』で確認できた金額が指定した口座に振り込まれたら、補助金交付まで完了となります。事業完了後、事業実施効果報告を提出しましょう。